彼の鼈甲の丸いめがねは
だんだんと下がって、
彼のキーボードを打つ手を止める。

それがおもしろいの。


「ねえ」
「ん?」

ワタシは急に声をかけた。
こっちを見た彼のめがねは、
やっぱり少しずれている。


そして、
同時に彼の左手が、
まためがねを上げる。


めがね越しの瞳の中にある、
大きな黒目を見つめると

「なに?」
と彼は聞いてきた。