鄙の自宅に着いたのは7時30分を回っていた頃だった
「へぇーここが鄙の家かぁー…」
珍しいものを見るように眺める生一
「一人で住むには大きな家だね。」
「お前がそれを言うか。」
生一の滑稽な一言に目を細め言い返した
一応礼は言わなくてはいけない
車から降りると
「き、今日は…」
そう言いかけると生一が顔をぱぁっと輝かせた
「ひ、鄙がデレた?!」
と慣れない感謝に顔を赤くする鄙を見て騒ぐ生一
「今日は送ってくれてありがとうっ……
“運転手さん”!!!」
そう言って車の戸を閉めると
急いで家に駆け込んだ
「えぇっ?!僕にじゃなくて運転手にぃ!!?」
チェスで負けた仕返しとでもいう感じの
事に、生一は微かに微笑んだ
そして静かなエンジンとともに
自宅に引き返して行った

