「なるほど。無意識か~」

咲良さんは倉坂さんの肩を叩き、それから私の肩を叩いた。

「大変だね?」

何がですか。

「そうでもないです。これで中々楽しいですよ」

倉坂さんはいつも楽しそうです。

「倉坂君は計画的だから。気にすることはないわよ。この子達の新人研修を私がやってからの付き合いなだけだから」

牧野さんはそう言って、くるりと堺さんを振り返った。

「そういう事らしいわよ」

何がですか。

「いいですねぇ。分かりやすいですー」

だから何がよ──────!!








「何だか、今日の飲み会は疲れました」

店を出て、バラバラとばらけていく皆を眺めながらコートを着ていると、倉坂さんがひっくり返った襟を直してくれる。

「ありがとうございます」

「俺は楽しめましたけれど」

そりゃ、最近の倉坂さんは何故か楽しそうだけれどさ。

「いつの間にか公認で。二人でいても奇妙な顔をされなくなりました」

それはどういう意味かと思って顔を上げて気がついた。

二次会に行くグループと帰るらしきグループが、揃って挨拶をしていくけれど誘われない。

会社でも、話をする人が減ったような気がしていたけれど、どこか一線引かれている?


「……何が公認になったんですか?」

「さあ。女性の噂はこういう時には便利です」

「…………」

女性の噂?
女性の噂って、どういう……


「あ。もしかして堺さん!」

「今頃気づきましたか」

「気づいていたんですか!?」

「どこにでもいるものです。人の事を面白がる人間と言うものは。実害がなければ俺は放っておきますが」