手芸屋に入ると色とりどりの毛糸が並んでいた
ついつい欲しくなってしまう



「ねぇ、蒼生先輩は何色が好きなの?」


リサは手にいろいろ毛糸束を持ち聞いた


「湊くんは…普段白色の服とか多いなぁ。
筆箱も財布も白だよ!」

「じゃあ白が好きなのかな!白色、白色~」


リサは白色の毛糸コーナーへ方へ行った


自分は湊くんに今年は何をあげようか悩んでいた

毎年湊くんから誕生日プレゼントを貰っているからあげない訳にはいかない

今年は可愛いブレスレットのような腕時計を貰った


今もその腕時計を付けている
《毎日付けてきてね》と湊くんに言われたからだ



「うーん…何あげよう…」


私が悩んでいると




「毛糸で何か作られるんですか?」



後ろから声がして振り返ると
店員さんが笑顔で立っていた



「えっと、何か誕生日プレゼントにあげるものを考えてて…」

「まぁ!手作りですか?!」

「ま、まぁ…」


本当は手作りとは決めて無かったけど
店員さんの笑顔につられて言ってしまった


「やっぱりこの季節になってきますと、マフラーですか?」

「いえ、マフラー以外で何かないかなぁーって思ってて。」



マフラーはリサがあげるから





「もしかしてお相手は彼氏さんですか?」

「ちっ、違いますよ!男子といえばそうですけど、幼なじみです!」


強く否定しすぎて店員さんも少し驚いていた


「それはごめんなさいね。じゃあその幼なじみの彼は何時も何をしている事が多いの?」


湊くんが何時もしていること…


「本…を読んでいることが多いかな?」

「でしたら、ブックカバーなんていかがですか?カバーですと、こっちの細めの毛糸とかオススメです!」


そういうと店員さんはいろいろ毛糸を見せてくれた



ブックカバーか…いいかも!


私は白と薄緑でツートンカラーのカバーを作ろうと決め毛糸を買った














10月3日


「蒼生先輩!今日誕生日って聞いて…
これ、よかったら貰ってくださいっ!」


リサは綺麗にラッピングしてあるプレゼントを湊くんに渡した


「ありがとう。そんな気を使わなくてよかったのに。」

「いえ…あ、今開けてみて下さい!
気に入ってもらえるか解らないんですが。」



湊くんはリボンを解き、中身を見た




「これ…マフラー?」

「はい!私が編んだんですっ」



湊くんは少し驚いたいた

無理もない、だってリサのマフラーは私があげた物より遙かに上手だったから



「よかったね、湊くん!これで今年からは新しいマフラーで過ごせるじゃん!」


私がそう言うと湊くんはもっと驚いた顔をして私を見た



?どうしたんだろう…湊くん
もしかして好きな色間違った??




「蒼生先輩?やっぱり嬉しくないですか?」


リサが心配そうに湊くんを見る



「いや、すごく嬉しいよ!あんまり上手なんでびっくりしたよ。」


ニコッと湊くんに笑顔を向けられたらリサはすごく幸せそう



私のブックカバー…どうしようかな
あんなお店で売ってるようなマフラーとじゃ、私のはお粗末すぎるかな…


ブックカバーの入っているカバンを見つめた








その日の放課後
校門を出ようとすると湊くんが待っていた



「湊くん…いいって言ったのに…」

「最近は日が短いんだから危ないだろ。」



そう言うと私の横に来て歩き出した


「そういえば、湊くん誕生日祝いとかしないの?」

「家はほぼ1人だからな。でも昼休み三嶋
がケーキ持ってきて祝ってくれたよ。」

「あはは、三嶋さんらしいね。」




どうしよう、今渡そうかな…



「あのっ、湊くん…」

「ん?何?」



私はカバンからプレゼントを取り出した


「これ、誕生日プレゼント。リサみたいな立派な物じゃないんだけど…」


プレゼントを差し出すと


「茜からのプレゼント?!開けていい?」

「う、うん…」


湊くんは包みを開けた


「一応ブックカバーなんだけど…もし必要なかったら使わなくても…」

「何言ってるんだよ!すっごい嬉しい! 今日貰った中で一番嬉しいよ。」


そう言うとと、湊くんは嬉しそうにブックカバーを撫でていた

そんなに大袈裟にしなくてもいいのに

でもあげてよかった
こんなに喜んで貰えると思わなかった



「茜、ありがとう。大事に使うよ。」


湊くんは丁寧に包み戻し、カバンに入れた



「そういえば湊くん、リサから貰ったマフラーしたいの?もうその古いマフラーしなくていいんだよ?」


まだ私があげたマフラーをしている湊くんに言った


「いや、愛着が湧くんだ。ずっと使っていると。」

「でもそれ、形が不格好だし、それに…」

「だから仲野さんに新しいマフラーを進めたの?」


「え?」


丁度私の家の前まで来たところだった




「茜は…俺と仲野さんをどうしたいの?」



何時もの穏やかな顔じゃない
無機質な表情…初めて見る湊くんだ…



「ど、どうって…」



もしかしてリサの恋心を応援していることがバレてる?



「最近俺を避けてない?嫌いになったとか?」





家の前のフェンスに追い詰められる



ガシャンと音を立てて
フェンスに背をつけていた



湊くんは俯き顔が影になって見えない






すると突然黙っていた湊くんは顔をあげて
ニコリと笑った





「じゃあね、また明日…茜。」






そう言うと私から離れ帰って行ってしまった




何だったんだろう…



心に出来たモヤモヤしたものを残したまま
家に入った











この日を境に私の日常が狂ってくることを
私は思いもしなかった…