キスをお先に、頂きました






黙ってこうして歩くけれど、遥葵は思ってるかな。



“私たち、付き合う理由ないんじゃないか”って。





そんなこと聞かれたら、私、答えられないかもしれない。



“ううん、あるよ”



――なんて。彼女なのに、言える自信がないよ…。





だってきっと、私の一方的な片想いだから。








「――…なあ」






そんなことを考えている時不意に、遥葵が口を開いた。



その言葉に、ビクッと肩が震える。







「なに…?」






遥葵の顔、やっぱり見れない。




歩きながら何気ない会話のフリをする。