クリスマスデートから帰ってきたら、幼馴染みが豹変してしまいました。


「ほんと希鶴くんはウチのどっかの誰かさんとは大違いね。冬休みになったからって浮かれもせず、また成績学年トップだったっていうのに手も抜かず、こうやってちゃんと日々勉強してるですもの。ホント、学生の鑑よね、それに比べて舞は」

「その勉強はどうしたの?なんでウチでごはんまで食べてるわけ?」


希鶴びいきなお母さんの嫌味をぶった切って聞いてやると、お母さんは娘のあたしでも引くくらいニヤニヤとうれしそうな顔して言いだす。


「希鶴くんはあんたが出掛けた後からずうっと熱心にお勉強してたのよ?お腹空いたんじゃないかって思って、差し入れに何か作ろうかって聞いたら、『おばさんの味、すごく好きなんですよ』って言ってくれてね。栄子ちゃんは今日も仕事だっていうし、ありあわせで悪かったけど、簡単にお夕食用意したから食べてもらってたのよ」

「お世辞じゃなくてほんと俺、おばさんの味付け好きなんですよね」



希鶴はまたもや笑顔の大安売り。


部活じゃ『おまえら走れッ、チンタラすんじぇねえッ』なんて容赦なく罵声浴びせて、部員にもマネにも恐れられているヤツなのに。とても同一人物には見えない好青年ぶりだよ、おー怖ッ。

でも褒められることに弱いお母さんは、本性を上手に包み隠した希鶴の笑顔にめろめろだ。



「あらあら、ほんとうれしいこと言ってくれるんだからっ」


お母さんはそういうと、意味ありげにあたしの方をちらっと見てにやりと笑ってくる。なんか、嫌な予感が。