クリスマスデートから帰ってきたら、幼馴染みが豹変してしまいました。


「今まで気付いてなかったなんて言わせねぇぞ」


痛みを感じるくらいの、鋭い視線。
希鶴のこの目、あたしはよく知ってる。



あたしがバスケ部のみんなのストレッチ手伝って背中ぐいぐい押してるときとか、顧問の翔ちゃん先生とダベってるときとか。いつも希鶴にこの目で睨まれた。

ストレッチのやり方がマズかったのかなとか、部活中の私語はちょっとでも許せないのかなとか、そもそもあたしのやることなんでも気にくわないのかなって不安になって。

やっぱ希鶴鬼だ、厳しいわって、その目にいつもビビってたけど。



でも今希鶴の目を間近から覗き込んでみると、あたしを責めるような色合いの中にどこか切なげなものが見え隠れする。

その思いがけない発見に、なぜかあたしは自分の内側にあるどこかがきゅんとするのを感じた。



「ったく。何が鬼軍曹だよ。おまえのがよっぽど鬼だっての。……クリスマスにこんな格好で、浮かれた顔して他所のつまんねぇオトコとデートになんて行きやがって。おまえどんだけ人の心ズタズタにすりゃ気が済むんだよ」



そう自嘲するように言うと。

希鶴はあたしの腕を引っ張って、テーブルの上に倒れていたあたしの体を起き上がらせてくれる。でも視線は合わせようとせずにまるで呟くように漏らす。



「嫌いなら嫌いってはっきり言えよ。重いなら重いって。……じゃなきゃこっちだっていつまでたっても諦めらんねぇだろ」

「え、っていうかさ。………あの、あたし、今日初めて知ったんですけど、希鶴があたしのこと、その、あの、えと……」



目の前にいるコイツに、あたしは恋されちゃってるんだ。

そう思った途端。

ぶわっと恥ずかしさが猛烈な熱になって込み上げてきて、あたしまで希鶴を見ることが出来なくなる。