「おい。飯まだか?」
超展開についていけずに石化してると、希鶴が不機嫌な声で催促してくる。
「あッ、ハイ!今お持ちします!」
つい部活のときみたいな口調になってしまうと、途端に希鶴は目つきを鋭くさせる。
「おまえさ。前から思ってたけど、タメのクセに敬語とか、俺のこと馬鹿にしてるのか?」
「ち、違います!……じゃなくて、違うって!」
答えながらなぜか我が家に当たり前のように用意されている、希鶴専用のお茶碗にごはんをこれでもかと山盛りにする。でも普段学校でもバケモノ並みの食欲を見せてる希鶴はあっという間に食べきってしまう。
「………リンゴは?」
「ハイっ!ただ今お持ちしますッ………じゃなくて!何希鶴人ん家で寛いでんの?なんであたしは自分の家でまで希鶴の下僕みたいにならなきゃいけないんだよ!!」
「下僕?」
希鶴は心外そうに眉を顰める。
「誰がいつおまえを下僕扱いしたっていうんだ」
「してるでしょ、いつもいつも!マネは他に2人もいるのに、部活中いつもあたしにばっかチマチマ用事言いつけてくるしッ、昼休みだって部活の定例会だの備品のチェックだのやるって突然言い出して、あたしひとり部室に呼び出すし!たまにはあたしだって友達とお昼食べたいのにさ!
部活終わってからもあたしが着替えようとするより先に『今すぐジュース買ってこい』とか『今日の部誌チェックしろ』とか希鶴がパシらせてくるから、いっつも美和ちゃんも結衣ちゃんも先帰っちゃうし!たまにはあたしだって希鶴以外の人と一緒に帰りたいんだからね!!
それにさ、これみよがしにウチに勉強しに来たりするなんて、超嫌味じゃん?また希鶴のせいでお母さんに『もっと希鶴くんみたいに勉強しなさい』って言われるんだよ?マジめっちゃ迷惑なんですけどッ!!」
言ってやった、言ってやったぞ。
常日頃ため込んだ鬱憤を、ついに鬼軍曹にぶつけてやった!
どうせあたしより口が立つ希鶴にいつもいつもいつも言い負かされてしまうのだから、先制パンチくらい食らわせてやったっていいでしょ?


