声なんてもう聴こえない

理科準備室

「なによ?」

「ちょっぴり話そうかと思ってね」

「は?」

「いいじゃないか、幼なじみなんだから」

「はぁ?意味わかんない」

 私の幼なじみはあの優しい悠里だけだ。こんなパチモン知らない。

「まだ気づかねぇーのか?」

「気付くってなにによ」

「だーかーらー」

 悠里は片手で私の顔を挟んだ。そのまま悠里の顔が近づいてきたと思うと、唇が私の唇触れた。

「っん、やめっ…」

 私は強引に悠里を押し退けた。

「やめてっ」

「嫌だった?」

「嫌に決まってるじゃないっ」

「ふーん、顔真っ赤だけど?」

 私は自分の顔に触れた。

「暑いだけだわ、用はそれだけ?なら、戻るわよ」

 半開きだった扉を開けて、私は理科準備室を後にした。

 廊下を早足で突き進む。頭を冷やしたかった。

「なによ、あいつが悠里なわけ…」

 私は廊下のはしっこに踞った。

「うるさい…、ドキドキしてんじゃない…」

 なんで、なんで?なんで、静まってくれないの…。