「どうですか?お仕事は?」
何か話さなければと思い、出たのだこれだった。
「はい、先生はこちらからの依頼もきっちり実施してくださっているので、助かっています」
「そうですか。それはよかったです」
「先生、お聞きしたいこともあったので、後でよろしいですか?」
「あぁ、構いませんよ」
「よろしくお願いします」
僕の返事に、彼女はニッコリと笑ってくれた。
本当に癒される。
いつまでもこの笑顔を見ていたいものだ。
ふと目の前の紅茶に目を向けると、あることを思い出した。
「あっ、いいものがあるんですよ」
「えっ?」
熊谷さんは、僕の言葉に不思議そうな顔をしていた。
僕は、席を立ち、棚に置いていたある物を取りに行った。
「これです」
「あっ、これ!」
テーブルに置いた箱を見て、熊谷さんは中身が何かがわかったようで、目を輝かせていた。
その表情を見るだけで、満足だ。
「先月学会で〇〇に行ってきたんです。その時に買ってきたんですけど、熊谷さんも好きかな?と思って」
『一緒に食べようと思って買ってきました』とはさすがに言えなかった。
「このお菓子、今人気ですよね。食べたことがなかったので嬉しいです」
「それは良かった。遠慮なくどうぞ」
「ありがとうございます」
このお菓子は、今大人気のお菓子で、僕が買った時も売れ切れ寸前だった。
スポンジ生地の中にカスタードクリームが入っているシンプルなものだが、一口食べて人気の理由がわかった。
食感がとろけるように柔らかい。
そして中のクリームも甘すぎず、外のスポンジと絶妙なバランスを保っていた。

