「米島の綿谷様ってどんな方かな?
好い人かしら?」
照姫が小首をかしげながら尋ねる。

「さあねえ、藩では、奥右筆を勤めれているとか。まあ、姫様が嫁がれるような方でないことは確かですよ。」

「早苗さん、そんなことはありません。同僚からよく聞きますが、藩の期待の新人だとか。今22になるようですが、親子2代で、足軽から奥右筆に登り詰めた人だとか。文武両道で、人柄もよいと聞きますが。」
磐城が反論する。

「もとは足軽!?なんとまあ。それに、従者が磐城と私、輿の担ぎ手二人とは。姫様の高貴な雰囲気に削ぐいません。」
早苗が憤る。

「早苗、綿谷様がいい人だったらいいじゃない。それに私、高貴じゃないと思うな、自分で言うのは悲しいけど。」

「そうですね。口を開いたら、高貴のかけらもありません。」
磐城がからかいながら答える。

「ひどい、磐城ったら。」


確かに、照姫は、高貴な面立ちをしていた。がしかし、ある事情から家族と離れた生活をしていたため、小さい頃から側にいた早苗、磐城、などの庶民派な人々の影響を強く受けて、庶民派な姫となってしまったのである。