照姫が城に戻って数日経ったあと、江戸に行っていた早苗が帰ってきた。

早苗は諸用があるとかで三ヶ月に一度江戸に行くことがあった。
照姫が、諸用とは何のことですか?と聞いても、はぐらかして、秘密です。と答えるばかりなので、何のためなのかははっきりしない。

早苗は主計が、逃げた事に大層憤慨した。

「なんということですか!あの仕事馬鹿遂にやりましたね!理由はなんです?」

「それが、はっきりしないのです。書き置きもなかったし…。」
照姫がそう答えた。

「あの頓珍漢!姫様のお心も知らないで
。」顔を紅潮させ、地団駄を踏む早苗。

「わたし、気にしてないよ。ただ、お体は大丈夫か心配だけど…。」

照姫は、そう答え、ただ満天の星空を眺めながら、顔を背けた。