こうべ物語




(今日も電気が点いてる…。)



鈴蘭台での対外試合の後。


さくらは毎晩、窓から勝利の部屋を眺めているが、部屋の明かりが点いていた。


それまでは、必ずと言っていいほど部屋の電気は消えていて、近くの公園で素振りをしていたのに。



(やっぱり…。)



試合中に見た光景。


勝利と監督が肘を見ながら話していた。


マウンドの上でも何度も腕を回していた。



(最近素振りをしていないのは、この前の試合中に何かあったんだ…。)



静かに窓を閉めると、そのままベッドの縁に座る。



(だからって、聞いてもいいのかなぁ…。)



どうしても聞きたい思いに駆られる。



(私に何か出来る事ってないかなぁ…。)



『さくらちゃん、中学卒業まであと半年程だけど、最後まで勝利を支えてやってくれないか?』



少し悩みそうになったが、先日の勝利の父親の言葉を思い出すと、心が軽くなった。



(おじさんもそう言ってくれている事だし、今度会ったら聞いてみよっ。)