試合は順調に進んでいく。
両チーム、投手の頑張りもあって6回まで無得点で進んだ。
(勝利…、やっぱり凄いな。)
先発ピッチャーとして、次々とアウトを取って行く勝利。
腕をぐるぐると回しながら、一生懸命に投げ込んでいく。
その姿に、さくらは我を忘れて見とれていた。
しかし、異変が襲ったのは7回のピッチングだった。
先頭打者を打ち取り、内野と声を掛けあいながら腕をぐるぐると回す。
さくらには、その動作が体をほぐす為、だと思っていた。
肘を見つめながら少し曇った顔をした勝利の姿がさくらには深く印象が残った。
それでも、次の打者へも一生懸命に投げて行く。
そして、7回も3アウトを取り、無事チェンジとなった。
8回、相手の攻撃の際、さくらはベンチで勝利と監督が肘を見ながら話している姿が目に入った。
少し不安そうな顔をする監督と、何度も頷きながら肘を曲げ伸ばしをする勝利。
(何かあったのかな?)
気になり始めると、止まらなくなる性格。
それでも9回も登板する姿を見て、きっと軽症だと思い安心する事が出来た。

