「さくらちゃん、勝利から聞いていると思うけど。」
勝利の父親が話しかけてきた。
「勝利は甲子園に出場するだけじゃ駄目なんだ。甲子園で優勝する事が本当の夢なんだ。」
「はい。」
「だから、愛知県の高校に進学させる。もちろん受験して合格しなければならないけど、勝利なら、夢を掴む為に、必ずやってくれるはず。」
「そうですね。」
「さくらちゃん、中学卒業まであと半年程だけど、最後まで勝利を支えてやってくれないか?」
「父ちゃん…。」
真剣にさくらに語る自分の父親を見て、勝利が恥ずかしくなったようだ。
「もちろんです!」
さくらは元気に答えると、勝利に目を向けた。
「幼馴染は幼馴染の良さや分かる事もあるから、何でも言って来てね。」
「ああ、ありがとな。」
汗をぬぐいながら笑って返事をした勝利は、すぐにまたバットを振り始めた。
「もう少し、横で見ていてもいいかな?」
「見ていても、たいして面白くないぞ。」
「いいじゃん。」
(こうやって傍で見る事が出来るのもあと少しなんだから…。)

