(この違和感、何だろう。)
『地味に生きて行くなら勝手に生きて行けばいいでしょ!』
(私も、やっと心の強さを手に入れる事が出来た…。)
その瞬間、涼子は突然顔を上げた。
(そう、違う。私はホントは地味に生きていたくないんだ。誠也という愛する人を見つけて、心の強さを手に入れたんだ。)
「聞きたい事ってね。」
真っ直ぐに誠也を見つめて話し始めた。
「私、見たんだ。」
「何を?」
「この前ね、私、誠也に会う為に鉄人28号の傍に立っていた事があるんだ。今日みたいに雨の日だった。」
「この前…。」
誠也は目線を上に向けて思い出そうとしている。
「私が見かけただけだから、誠也は気付いていないと思うよ。」
「そうか。それは悪かったな。」
「その時ね、今日と同じ、青い傘を差していたの。」
「どうして声を掛けてくれなかったんだい?」
(声を掛けれなかったのは…。)
戸惑う気持ち、躊躇する気持ち。
(私は、誠也の彼女。)
涼子は、意を決した様に話を続けた。

