(変に聞いて、今の関係が崩れるなら…。)
何も聞かず、今まで通りで良いとも思う。
「何か、聞きたい事があったのかい?」
「…。」
(聞く事が怖い。)
聞く事で全てが終わってしまう気がした。
(誠也はモテるから他に女性がいてもおかしくないし。)
「体調でも悪いのかい?」
少し心配そうな顔で誠也が尋ねてくる。
相変わらずの無造作に束ねた髪。
一度コンタクトにしたが、また戻した黒縁の眼鏡。
膝下までのスカートにハイソックス。
(そう、私は地味な女。誰よりも地味で不細工な女。それでいいでしょ。)
自分で自分を納得させようとする。
(こうやって、一緒に話してくれるだけで幸せだと思わないと…。私なんかが欲張ったら駄目。それは自分自身が一番よく分かってるでしょ?)
『涼子さんがしっかりしないから、駄目なんじゃないのですか?』
何かが違う。
違和感を感じる。

