「悪いな、遅くなって。」
傘ごと顔を上げると、誠也が笑顔で見つめていた。
「ううん。」
(ちゃんとメール見てくれていたんだ。そして、来てくれた…。)
それだけで、涼子は救われた気がした。
しかし、誠也の差している傘を見て、再び気持ちが沈んだ。
(青い傘…。)
あの時。
他の女子高生と入っていた青い傘。
指輪を見つめ合っていた青い傘。
「珍しいな、涼子から声かけてくれるなんて。」
「…ごめんなさい。」
どう言えば分からなくなり、とりあえず謝った。
そんな涼子の髪を、傘を持っていない手で優しく撫でる。
「嬉しいよ。」
雨脚が強くなる。
「建物の中に入ろうか。」

