そのままゲートへ向かって歩き出す。
どこかで執事が待っていると分かっていたが、気にせずワイン城の外へと出た。
広大な田んぼが広がっている。
遮るものが何もない、とても気持ちの良い光景。
呆然と見つめていると、バス停に1人の女性が立っている事に気付いた。
少し俯いている女性。
麻里奈はその姿を見て一目で誰なのか理解出来た。
(涼子ちゃん。)
湊川神社で出会った時のような、汚れた制服を着ておらず、花柄の半袖のブラウスとベージュのロングスカートを穿いている。
麻里奈はそのまま声が聞こえそうな距離まで近づくと、涼子に声を掛けた。
「涼子ちゃん!」
誰もいない田んぼの中でまさか自分が声を掛けられると思ってもおらず、涼子は目の前で手を振っている麻里奈に驚きの表情を見せた。
「麻里奈さん!」
「覚えていてくれたんだね。」
「もちろんです!あの時は、ありがとうございました。」
素早く涼子が頭を下げる。
「お風呂や食事だけでなく、洋服まで頂いて…。」
「いいの、いいの。困った時はお互い様だから。まだバスが来るまで時間あるよね?ちょっと喋ろうか?」
バス停のベンチで並んで腰かけた。

