「ん?麻里奈、どうしたんだい?」
ワイングラスを軽く揺らしながら見つめてくる。
「その…、ちょっと、お手洗いを…。」
「そうかい、なら、ボーイを呼ぼう!」
「い、いえ。結構です。1人で行けますから。」
そっと席を立つと、目を合わさず、お手洗いに向かって歩き始めた。
そして、そのままレストランの外に出る。
厳しい日差しが照りつけている。
(初対面なのに、麻里奈、麻里奈って…。)
相手の気持ちを感じようとせず、呼び捨てにするその態度に麻里奈は限界が来ていた。
同時にその姿に七海を重ねる。
『麻里奈ちゃん…。』
(七海君は、どこまでも優しいものね…。)
自然と若い男性を目で追いかけてしまう。
(七海君…、一体どこへ行ってしまったの…。)

