音君(オトキミ)



それ以来、私はクラスメイトには音楽のことを話すが、担任の先生には話したことはなかった。

でも、もうそろそろ言わなければいけないのはわかっている。


二者面談が終わって、そんなことを悶々と考えながら玄関へ向かっていると、幼なじみの高橋優斗が玄関にひとりでいるところを見つけた。



「高橋!」

「おー、お前か。なに、昨日言ってた二者面談は?」

「今さっき終わったよ~。ほんと、いつになったら私は話せるようになるんやろ。」

「…お前さ、音楽したいんよな?」

「え?うん。」

「いきなりだけど、俺が進学したいと思っている学校に行ってみないか?」




この高橋の一言が私の運命を変えると、この時は思ってもいなかった。