「寄付金を止める、と?」
「うん。坪根グループからの寄付金が止まれば、ここも相当危なくなるしね」
「坪根グループ…?」

聞いたことのない単語に首をかしげる。

「あれ、咲羅ちゃん知らなかったっけ? 坪根グループって」
「…何の話?」
「そっか、知らなくても仕方ないよね。あんまり表には出てないから。花梨ちゃん、説明してあげて」
「…了解しました」

花梨の顔には、どこか屈辱を感じた。

「日本には色々企業があるけど、その中には親会社と呼ばれるものがある。これは知ってるわよね? その親会社の中で、最大の規模を誇るのが坪根グループ。でも本来、ここまで束ねると財閥扱いになるから法律上は禁止されている。だから表には出てこない。知っているのは、私達と姫…だけ。分かった?」
「…まあ、何となくは…」

その瞬間だった。

「花梨」

姫乃が花梨の名前を呼ぶ。

「はい」

花梨が振り向く。その時にはもう、花梨の命は消えかかっていた。

銃声が響く。それ以外の音全てが聞こえなくなる。雨の音も、普段は意識しないような雑音も。全て、銃声にかき消されていた。

「ひ…め…?」
「最後の所、ちょっとミスっちゃったよね。私に仕えてるんだから、自分達より私の名前を先に出してよ」
「し…失礼しました…」
「謝らなくていいよ。だってもうすぐ、天国に行っちゃうんだから」
「そ…んな…」