「それで…私は何を?」
「そいつらを『もうどうしようもない』状況に追い込んだ」
「というと…?」
「結果だけで言うと…学校から追い出した」
「えっ…」

私は、そんな酷いことをしてしまっていたのか…?

「何で…そんなこと…」
「人間、平等だろ?」
「えっ?」
「人っていう生き物は、親を選べないんだ。なのに、どうにも親から譲り受けたものが多すぎるだろ? そういうの、不平等だと思わないか?」
「う~ん…」

今の私には答えられない質問だが、恐らく記憶が消える前の私なら、すぐに「思う」と答えていたのだろう。

「同じ生物として産まれたんだから、扱いは同じじゃないとな。もっとも、人が人を扱うってこと自体間違ってると思うけど」

頭が沸騰しそうだった。こんな複雑なことを考えていた、ちょっと前までの私って一体何者なんだ…。

「で、お前の記憶が今ないのも、その復讐をしようとしている最中に窓から飛び降りたからなんだ」
「何で飛び降りたんですか?」
「窓から脱出しようとしてたんだ。義手と義足なら、痛くないってな」
「それで…その復讐、成功したんですか?」
「ああ。お前が飛び降りた後、その氷室ってやつが自分から『どうしようもないことをしちゃった』って言ってな。学校を自分から辞めた」
「その後、その人は…?」
「さあな。あれから一週間も経ってるし、今どこかなんて分からない」
「…」

ひょっとして、私の狙いはこれだったんじゃないのか…? 飛び降りて大けがをして、氷室さんに学校を去らせる…。

寒気がして、私は布団を顔までかぶった。