「…と、まあざっくりと説明するとこんな感じです」
「はい…」

長い間ずっと話を聞きっぱなしだったので、疲れてしまった。

話によれば、私の名前は尾所咲羅というらしい。さっきの二人は、私の「友達」の渡辺龍臣さんと黒田籠夜さん。そしてこの「白衣」の人は、龍臣さんの「父親」の渡辺雅人(ワタナベ・マサト)さん。

私は「学校」で飛び下りた時に頭を強く打ち、私のこれまでの記憶がなくなってしまったらしい。とは言っても完全になくなっているわけではないらしく、場合によっては戻ることもあるらしい。そしてその時に負った怪我を治してくれるのが、この雅人さん。

そして…私はこれより前にも負傷し、四肢を失っているという。初めて聞いた時は信じられなかったが「掛け布団」を取ってもらったのではっきりとその現状が飲み込めた。

「じゃあ、後は龍臣達に話してもらいます。全部を知ってるわけじゃないので。龍臣」
「は~い」

龍臣さんと籠夜さんが私の近くまで来ると、雅人さんはどこかへ歩いて行った。よく見れば、二人はイスに座ったまま移動していた。

「尾所、よく聞いてくれ」
「はい…」
「…尾所が俺達に敬語使ってるって違和感あるな…」
「何か言いましたか、龍臣さん?」
「下の名前で呼ばれるとかもっと違和感…」
「龍臣さん?」
「お、おう。…それでだ。お前に今四肢がないっていうのは分かってるよな?」
「はい」
「実はそれ、お前の別の友達にやられたやつなんだ」
「別の友達…?」
「ああ。お前の記憶が無くなる前、俺達は三人で、そいつらに復讐していた」
「復讐って…?」
「同じくらいに苦しい思いをさせるってこと」
「じゃあ、その友達っていう人も…」
「いや、腕と脚はちゃんとついてる。だけど、俺達はそいつらの夢を壊していたんだ」
「夢…?」
「何かになりたいっていうこと。記憶が無くなる前、お前はモデル…体の美しさを売りにするのを目指してた。だけど、お前がやられてそれにはなれなくなった」