「…クソっ…!」

ここで私は、一か八かの大勝負に出ることになっている。

「おい、お前!」
「は、はい!」

渡辺に呼ばれた私は、おびえるふりをしてセリフを言う。

「ちょっと来い!」

私はタイミングを見計らって、窓の方へと一直線に走る。それを見た渡辺が、窓を開ける。

私は、窓の外へと跳んだ。

皮肉なことに、私は自分の体が壊れないように、壊れた四肢を使うことにしたのだ。

本物の人間のそれより頑丈にできている私の四肢は、教室の窓から飛び降りたくらいでは壊れることはない。何やら、強化カーボンナノ…とかいう呪文のような素材でできているらしい。

辺りを見てみる。砂が一面に敷き詰められたグラウンドが、私の方に迫ってくる。でも大丈夫だ。私は、怪我をしない方法を知っている。

…ん?

背筋に嫌な寒気が走る。そしてもう一度、正面を見る。やはり、グラウンドが目の前に迫ってくる。

私は…頭から落ちようとしていた。

途端にパニック状態に陥ってしまう。嫌だ。こんなところで死にたくない。四肢は壊れても直せるが、頭は無理だ。

嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ…。

だが、その願い空しく、私の頭に激しい衝撃が走った。

「うっ…!」

そうだ、手を突いていればよかったかも…。なんてことはもう後の祭り。

…何だか眠くなってきた。私はその睡魔に襲われるがまま、目を閉じた。