「な、何をする気…?」
「人質として追加させてもらう」

ここからは、私の代わりに渡辺が答える。あえて教室の外にも聞こえるように、大きめの声で。

「人質…?」
「ああ。だが安心しな。お前の他に、あと三人人質がいる。確か名前は…尾所、黒田、渡辺だったな」
「何がしたいの…?」
「答える義務はない。すでに警察に要求はしておいたからな」
「…」
「そうだ、一つ言い忘れていたが…少しでも俺の指示以外の動きがあったら、すぐに殺す。これでな」

天井に向かって銃を撃つ。教室の外からも悲鳴が聞こえる。

「ひゃっ…!」

雪乃も硬直して動かなくなった。

「それにしても残念だな」
「え…?」
「救世主が現れなくて」

その言葉に呼応し、黒田が指を鳴らす。ここからのセリフは私も知らないので、正直不安だらけだ。

「そこまでだよ、強盗さん」
「ふっ…人質ごときが何を…」
「残念だけど、僕もう人質じゃないから」

黒田は両手を大きく横に開いた。

「なっ…」
「さ、どうする? もう一回僕を捕まえる?」

黒田の演技力には、ちょっと驚かされていた。