「す、須戸さん…」

あわてふためく茉湖をカメラ越しに見ながら、私は変装を解いていた。そろそろ、種明かしと参ろう。

速足で歩き、茉湖と須戸さんがいる場所へと急ぐ。

「離して下さい、須戸さん…!」
「ダメだ!」

声はもうすぐそこで聞こえる。廊下を駆け足で渡る。

「いた…」

数メートル先に、二人の姿が見えた。

「茉湖!」
「…咲羅…?」

茉湖が私の方を見て、小さな悲鳴を上げる。

「君は…」
「騙してしまって申し訳ありません、須戸さん。…茉湖、突然だけど、モデル辞めてくれない?」
「えっ…?」
「私を突き飛ばしてオーディションに出られなくしたって言うのに、とぼけるの?」
「えぇっ!? 茉湖、本当なのか!?」
「…はい…」
「でも、普通に言っても芸能人っていう特権が発動されるでしょ? だから、こうやって茉湖の訴えているストーカー被害を動画にしたの」
「…知ってたんだ…」

いつの間にか、須戸さんは茉湖を離していた。茉湖が私のそばに来る。

「私の腕と足…なくなったのは知ってるよね」
「うん…」
「人間は平等だから…私と同じように、夢、壊させてくれない?」

後日、マスコミ各社は茉湖の芸能界引退を大々的に報道した。そして、茉湖は学校からも去ったのだった。