そして…。

「ご臨終です」

病院で、迅奈は息を引き取った。むしろあの出血量で即死でなかったのが奇跡なほどだった。だが、両親が間に合うという奇跡は起こらなかったらしい。

迅奈は…自分なりに、答えを出したのかもしれない。平等であるために、どうすればいいのか。

腕と足を失って小さくなった迅奈が横たわっているのは、皮肉にも私が運び込まれた病院の、私が眠っていたベッドだった。

何故私は迅奈を止めようとしたのか、それについて少し説明しておこう。

もうすでに、迅奈は「どうしようもない」と言った。だからこの時点で、私の夢壊しは終了していたのだ。なのに迅奈は、私と同じように腕と足を失えばいいと思ったのか、切り落としてしまったのだ。

こうなることが予測できていた私は、止めようとした。だけど、間に合わなかった。

だけど…迅奈の夢は、こうなって本当に壊れたのかもしれない。いつか、迅奈はこんなことを言っていた。

「私、陸上の選手になりたいんだ」

腕と足を失ってしまっては、もうその夢は断たれてしまう。私の夢が断たれたのと同じように迅奈の夢が断たれたのなら、これも平等なのかもしれない。

窓から見える、夜になりかけの灰色の空を見ながらそんなことを思っていた。

後日。

学校に来ると、私はとんでもないものを見てしまった。

「え…?」

黒田と渡辺が…車いすに、乗っていた。

「ちょっ、どういうこと…?」

私が尋ねると、二人は笑顔で答えた。

「よく考えたら、俺らもこうならないとだよなって思って」
「尾所も俺も黒田も、同じ人間だからな。病院で足を切るの、結構勇気いるもんだな」
「え…切ったの?」
「ああ。まあ一応繋がってるから本気出せば一応歩けるけど、走るのはキツい。車いすの方が楽だ」
「誰に切ってもらったの? まさか自分?」
「いや。頼める人がいたからな」

頼める人とは誰なのか、それを私は知っていた。だが、今は言う必要はないだろう。