「何、これ…」
「トラックにひかれた時には、もう二の腕と太もも辺りがグチャグチャで…。もう手遅れだった、って病院の先生も言ってた」
「…」

私の夢が、終わった。

「咲羅、モデルになりたいって夢あったよね…」

こんな体で、モデルになんてなれるわけがない。

「…でも、どうにかなるって。最近の義手とか義足って、思い通りに動くようになってるから」

そういう問題じゃない。言いたかったけど、驚愕と絶望で声が出なかった。

「…私、ここにいた方がい」
「いや」

希実が言い終わる前に、私は首だけを希実とは反対の方向に向けて言った。

「…うん。分かった。じゃあ…ね」

病室のドアの開閉音が聞こえる。私はそのままの姿勢で、病室の外を眺めた。

制服が半袖になり始めるこの頃は、太陽が少し活発に感じられる。それは今私のいるこの場所でも同じで、木の隙間から差し込む日光は私の目を細めていた。

「はぁ…」

ため息は、初夏の暑さに蒸発して消えた。

人はこんな時、もっと絶望するものかと思っていた。しかし、ある程度以上の絶望があると、そうでもないらしい。

義手と義足をつけたって、私の夢が戻ってくるわけじゃない。戻ってくるとしても、せいぜい少し不自由な日常生活だ。

それでも、とりあえずないよりはマシ、と、病院の先生と義手ならびに義足をつける手続きは一応しておいた。