コワレモノ―人類最後の革命―

「…よし、脱出成功、だな」

ハンドルを握りながら渡辺の声を聞く。

「ちょっと足くじいたけどな」
「くじく足もないでしょ、黒田」
「それ、言えてる」
「お前もだろ、渡辺」

ガラ空きの道を走る一台の白いワンボックスカー。運転しているのは私。後ろの席には、渡辺と黒田が座っている。

「それにしても、よくこの車が動くって分かったわね? 鍵がかかってたかもしれないし、キーが刺さったままとは限らないでしょ?」
「ライト点いてただろ? キーを抜いた状態だとライトが点かないようになってるんだ、この車種は」
「へ~…」
「レースゲームもやっといてよかったぜ」
「さすが、引きこもってただけあるわね」
「まあな」

バックミラーを見ると、黒田が少し照れくさそうに火傷の痕を撫でていた。

「さてと、これからどうする?」
「『どうする』って言うよりは、『どうなる』って言った方がいいだろ。これからのこの世界は、全部『あの方』が決めるんだからな」
「平等に、ね」
「ああ」

高速道路の下には、ビルが林立している。だが同時に、川も流れている。川の向こう岸は、田畑の中に点々と民家が建つ田舎町だ。これが、全て同じになる。人間が、真の平等を手に入れるのだ。

「ユートピアの完成ね」

空は今まで見たことがないほどの快晴で、太陽も一段と輝いている。冬に始めた私の復讐に、ようやく春一番が吹いた。