コワレモノ―人類最後の革命―

「道開けて!」

出来る限りの大声で叫ぶ。人ごみにかき消されて自分達でも聞こえなかったが、それでも私達の周辺にいる人には届いたらしい。渡辺が全力でこぐ車いすが、人でできた壁を掘って進んでいるように見えた。

「ちょっ…インタビューに答えて下さい!」
「一緒に飛行機に乗っていた方達は!?」
「何で黙ってるんですか!」

分け入っても分け入っても人、人、人。今ここに、果たして日本の何パーセントの人間がここにいるのだろうか。

「クソっ…これじゃキリがない…。尾所!」
「何!?」
「前の車、見えるか!?」

前の方に目を凝らす。人の群れの中に、白いワンボックスカーがあるのが分かる。徹夜でここまで来たのか、ライトが点灯したままだった。距離的にはかなり近いが、そこまで行くにはまだ時間がかかりそうだ。

「うん!」
「あれに乗るぞ!」
「乗るって言ったって、周りにも人がぎっしり詰まってるじゃない!」
「どいてもらえればいいだろ!」

こぐスピードが上がる。…いや、ただ下り坂になっただけだ。

「尾所、思いっきり腕を引き寄せてくれ!」
「どういうこと!?」
「腕を自分の方に持ってくるんだよ!」

言われるがままに、前後に伸ばした腕を胴の方に引き寄せる。すると渡辺と黒田が私の方に寄って来た。そして…。

「おい、車いすが走ってくるぞ!」
「危ない!」

二人の乗っていた二台の車いすが、バランスを失い坂を転がり落ちて行く。人々はそれを避け、道を開ける。

「今だ!」

車の周りから、一瞬だけ人がいなくなる。

「黒田、ドア開けて!」

右手を車の方に伸ばす。人いきれのおかげで、そこまで力を加えずとも腕が動くようになっていた。

「開けた!」
「乗れぇぇぇ!」

タン、と跳ぶ。車の中に、私達三人の体が滑り込んだ。