1階に行くと、もう父親が帰ってきていた。
「おかえり。」
と僕は言う。
「....さっきも言ったじゃないか。あぁ、ヒロヤか。」
父親はゴクンとビールを飲むと、「ただいま。」と言ったがすごく冷たい挨拶だった。
母親には優しく、僕に接してくれるが、父親は違う。
桜空だけが桜空であり、僕は赤の他人だと、最初、僕の人格ができた頃に言われた。
だから、この態度は当たり前のことであったのだ。
「....今日も残業したんだ?」
ソファーに腰掛け、何気なく聞いてみる。
「あぁ、そうだ。」
「・・・お疲れ様。」と僕は言うがこれ以上に会話を続けたいとは望まなかったのでお風呂に入ることにした。
「どこに行くんだ。」
父親はギッと睨みつけてきた。
「お風呂場。」
「母さんが入ってるんだ、入るな。」
「そうだったんだ、だからいないわけだ。」
「あぁ、そうだ。」
親子じゃ有り得ないほど冷めたい会話。
すぐに一階へ降りたことに後悔する僕に、「まぁ、座れよ。」と珍しく父親は隣の席に僕を寄せた。
なんの気晴らしかと思いつつ、とりあいず座った。
「なあ、ヒロヤ。お前は、桜空をどう思うんだ?」
「・・・さあ?わからんない。」
本当のことだ。
僕も桜空もよくわかんない。
「そうか。なら、どうでもいいってことだな?じゃあ、頼みがある。」
どうでもいい、というわけでもないがひとまず聞くことにした。
「桜空の人格のままでいてほしいんだ。桜空の体は桜空のモノだ。ヒロヤ、お前のじゃない。」
赤の他人はもう、この世に現れるな。ってことか…。
「ふぅーん…。」
「良いのか?!」
「・・・・残念だけど、無理だよ。」
僕だって、必要じゃないことはわかってる。
だけど、だけど…
「怖いんだ。それに、仕方さえわかんないよ。」
「……そうか、分かった。すまない、この話は忘れてくれ。」


