「....い!....起きなさい!」
お母さん?
どこからかお母さんの声が聞こえて、うっすら目をあけた。
「お母、さん....?」
「やっと起きたわ....。その声だと、桜空よね?」
「そうだけど....」
「友達から電話よ?今すぐ話したいっ、て。」
誰だろ....?
今すぐ話したいっ、てまぁ誰かは想定はつくけど…。
もう少し、寝たかったのに。
と不満ながらもお母さんから渡された子機電話を手にとった。
「もしもし?今変わったよ。」
と、私が言うのと同時に、母は部屋から立ち去った。
「あっ!桜空〜!!聞いてよぉー。」
この声、やっぱり....梨花だ。
梨花は夕方、いや、夜に必ず私に相談事をぶつけてくる。
正直言ったら、学校で話してほしい。
電話で聞くのは案外疲れるし、眠たいし、長いし…。
これを毎日となると、さすがに面倒くさい。
さてさて、今日はどんな相談事を?
「今日、桜空がぁ部活来なかったから寂しかったんだよー?」
え、部活?
あっ、そっか....、ヒロヤにチェンジしてたんだった。
「ご、ごめ…なんか、気分悪くて。」
「えぇ?でも、休む理由は家の用事、でしょ?」
「あっ、え、そ、それもあったんだけどさ…。体調不良でもあって、ね?」
「ふーん、、、。大丈夫?」
梨花は疑い深い性格だから、わたしの嘘を見抜いてるかもしれない。
と、察知した私は話を変えるような流れにすることに。
「うん!大丈夫!あのさ、今日、先生可愛そうだったよね....あれはいくらなんでも酷いよね。」
私と同じクラスの人なら強烈に残ってるはずの、担任交代の盛り上がり…。
あれ、そういえば担任交代の件どうなったんだっけ??
記憶が…あるようで、ない。
「酷いって....桜空がそれを阻止したんじゃん!」
「阻止?」
「うん!桜空、急に不良に反撃してさ、先生を庇って、担任交代を阻止したけど、目つけられたじゃん!大丈夫なの?」
「…嘘。」
嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘ーっ!?
えっ、まさか…ヒロヤ!?
不良に反撃?!え、待って。つまりさ、助けちゃったから....私は、不良のイジメの的とかになってないよね?
私は、普通な学生なんだから、大人しく…やり過ごしてたのに。
そんなぁ....。
「桜空、変わったよね。桜空ちゃんはすごい、ってみんな言ってたよ」
’’桜空ちゃんはすごい’’
そんなことをみんなから言われてたんだ…。
桜空じゃないよ、私じゃない、全部、ヒロヤだよ。
変わったのは、私じゃなくて、ヒロヤとかわったから。
えー、もう、明日学校行きたくないー。
「はあ…」
「....桜空が止めなかったら本当に先生は担任交代されてたかもしれないよ?みんな、’’可哀想’’って思うだけで誰も動こうとはしなかった。桜空は、後悔しなくていいよ。」
ヒロヤとかわなかったら私も動かなかった。
ヒロヤのお陰だよ。
ありがとう、ヒロヤ。
そうヒロヤに届くことを念じて手をぐっ、と握った。
「っ…!」
凄まじい頭痛がきた。
思いが伝わったってことかな…?
ヒロヤとのバトンタッチは、
正直、
辛い....。


