部活動に入っていない遥隆の夏休みは、夏期講習と図書館通いの毎日だ。
入試も定期テストもトップの成績を修めた遥隆にとって、勉強するのは当たり前のこと。
けれど、帰ってくる『なおちゃん』の事が気になって気になって、勉強に打ち込めずにいた。
そんな自分を戒めるために予定をぎっしりと詰め込んで、勉強の事だけを考える様にしていた。
それでも時折、脳裏を掠めるあの笑顔。
幼かった自分も、今ではもう高校生だ。
小さかった身体は嘘みたいに大きくなって、クラスでも背の高い方に入る。
自分ではそんなつもりはないが、女子に告白されたことだってある。
きっと、今の自分を見たらなおちゃんは驚くだろう。
そう思うと自然に笑みが零れる。
──早く、なおちゃんに会いたいな。
気持ちばかりが急いてしまう自分に気が付いて、遥隆は慌てて参考書のページを捲った。


