「そんじゃ、食おうぜ」
2人揃って、いただきます、と言い掛けた時だ。
和やかな空気を打ち破るかの様に、ドアチャイムが鳴り響いた。
瞬間、七生は顔を顰めて舌打ちする。
そんな彼の様子が気になる遥隆だが、当の七生本人はチャイムを無視して「食おうぜ」と遥隆を促してくる。
「お客さん、いいの?」
「アレは客なんかじゃないからいいんだよ」
そう言って味噌汁の器を手に取る七生だが、しつこいくらい鳴らされるチャイムに段々と苛立ちが沸き起こる。
遥隆は七生を心配そうに見つめていたが、とうとう七生に限界がきたようだ。
七生は、ガチャン、と音を立てて食器を置くと、ズカズカと大股で玄関まで行く。
勢い良く扉を開ければ、見慣れた顔がニヤニヤと嫌な笑みを浮かべていた。
盛大に溜息を吐く七生の背中越しに、遥隆にも訪問客の姿が見えた。
──あの人は……。


