「こ、こんばんは」

「おう。待ってたぜー」


 もう待ち切れない、という風に七生が遥隆の腕を引く。

 されるがまま部屋に入ると、山積みの段ボールは消え失せて、代わりに1人暮らしにしては少し大きめのテーブルが部屋のど真ん中を占領していた。

 しかも、2人では食べ切れないほどの料理を載せて。


「……すごい。これ、全部なおちゃんが?」

「ちょっと張り切り過ぎて凄いことになってるけど、全部自信作だからな! 好きなだけ食べてって」


 炊き込みご飯にお吸い物、焼き魚に煮物。

 付け合わせの酢の物。

 それだけでも母親の作る料理を上回る豪華さなのに、天ぷらや刺身まである。

 まるで、温泉旅館等で出される懐石料理の様な品々に、遥隆はただただ「凄い」としか言えなかった。


「飲み物は麦茶でいいか?」

「うん、ありがとう」


 促されるままに腰を下ろした遥隆は、目の前の料理と目の前に座る七生とを交互に見遣る。


「本当に、料理が好きなんだね」

「俺の唯一の特技だからな。どうせ食べるなら美味い方がいいだろ?」


 はにかんだ笑みを浮かべる七生につられて、遥隆も自然と笑みを浮かべる。

 全ての料理が出揃い、七生は遥隆の正面に座った。