講習から帰って来てからずっと、遥隆はソワソワしていた。
そんな彼を見て、彼の父親は笑いを堪えるのに必死だった。
その理由は至極単純。
あの『なおちゃん』の部屋にお呼ばれされたからだ。
そんな言い方をしては少し語弊があるかもしれないが、遥隆からしてみれば一大事だ。
しきりに時計を気にしては溜め息を吐く。
その繰り返し。
七生と約束した時間まで、あと30分。
早く行きすぎても遅くなっても相手に悪い。
徒歩で数分も掛からない場所なのだ。
迷いに迷った挙句、きっかり5分前に自宅を出て、1分と掛からずに七生の部屋のチャイムを鳴らした。
程無くして、パタパタと足音が聞こえて開かれた扉から笑顔の七生が登場する。
つられて笑顔になる遥隆だが、緊張の余りぎこちない笑みになっていないかと、内心焦っていた。


