「親父さんに聞いたんだけど、お前も第一遠和学園に通ってるんだってな。2学期からの編入になるから、よろしくな」
「あ、うん。こちらこそ」
「あの学園凄く広いんだろ? 後で案内してくれよ」
「うん、僕で良ければ」
「そういや、お前って和食派? 洋食派? 何が好き?」
「えっ、和食の方、かな……」
「覚えとく。俺さ、こう見えて料理得意なんだぜ」
「そうなんだ。凄い……」
会話を続けようと思っても、返事をするのが精一杯だった。
悪いのは自分だと分かっていても、現実がうまく飲み込めない。
それでも、こんな自分に笑顔で話し掛けてくれる目の前の彼は、やはりあの『なおちゃん』なのだろう。
「ん。どうした? 気分悪いのか?」
俯き加減になる遥隆を心配して、七生が顔を覗き込んで来る。
「……っ」
ぐっと縮まった距離に思わずドキリとしてしまった自分が、何だか悔しい。
「大丈夫だよ」と遥隆が笑顔で返すと、ほっとした様に七生も笑顔になった。
「そうだ!」
突然、パッと明るい表情になった七生は、びっくりする遥隆に構わずその肩を掴む。
「今夜は一緒にメシ食おうぜ!」
久し振りだから色々話したい事もあるし、と、七生は満面の笑みで遥隆の肩を揺さぶった。
「……や、でも」
「遠慮するなって」
七生の申し出にどう返事をしようか遥が迷っていると、勢い良く玄関扉が開けられた。


