「ねー!見て見てー!ゆりりん超可愛いんだけど!」


ホームで電車を待っていると雑誌を開いて話している女の子達がいた


「ゆりりんて声優さんなんだよねー!スタイルもいいし可愛いしコスプレも似合うし、最近服のブランドも立ち上げたんだよねー!才色兼備だわー」


「私もゆりりんみたいになりたーい」


彼女達の会話に自然と笑顔になる


ーー見えているものが全てではなく、みんな何かしら抱えていてそれでも前を向いて歩いているということ


百合は高校卒業後、両親を説得し専門学校へ入学

今は人気声優としてその名を轟かせている


プシューっと大きな音を立てて電車が目の前に現れドアが開く

車内に乗り込みいくつかあった空席に腰を下ろして変わりゆく景色を眺める

きっと父や母、ハルトもこの景色を見ていたんだろうと思うと同じ時間は過ごせていないが同じものを見ているということが嬉しくなる



一駅着いた時にお腹の大きな女性が車内に入ってきた

茉莉花はすかさず席を立ち、女性の元に向かい席を譲った


「ありがとうございます」


『いいえ』


女性は優しく自身のお腹を撫でる



『男の子ですか?女の子ですか?』


「!男の子です」


女性は優しく微笑む

その笑顔が綺麗で茉莉花はつい見惚れてしまった



ーー自分が変われば周りも変わるということ


ーー踏み出す時にたくさんの勇気が必要だけど、その一歩が新しい場所に自分を連れ出し新しい出会いを作ってくれる



ーーあなたと出会ってからたくさん友達ができた

ーーあなたが踏み出す一歩を導いてくれたんだよ