それから晴人は少しずつ草太に心を開き始めた
放課後は植えたバーベナの水やり、授業での質問
二人はまるで親子のような兄弟のような、そんな存在になっていった
「俺の娘も晴人と同じ歳なんだ」
「先生、子供いたんだ」
「ああ、奥さんが亡くなって男手一つで育てた。俺の子かと疑うくらい出来た子だよ」
「じゃあ奥さんに似たんですね」
「なんだとー!」
はははっとふたりで笑い合う
草太が変わるきっかけをくれた最愛の妻が亡くなったことは以前に聞いていた
悪態をついてたのは少しでも辛い気持ちを紛らわせようとした晴人の心遣いだった
「俺は、娘がもし結婚するって言いだしたら晴人みたいな奴がいいな」
「…気が早いっすよ。俺らまだ16ですよ」
「娘が大きくなってくと、男親はそんなことを心配するようになるんだ!」
ふーん、と晴人は解きかけていた問題に目を移す
「晴人は夢とかないのか?」
「夢は見るもんですよ」
「お、いいねー」
草太は晴人の解いた答えを反対から見てチェックマークをつける
答えが間違っていたことにハルトは頭を抱えた
「じゃあ目標や…"どういう人間になりたいか"」
「"どういう人間"?」
「ああ、なんでもいいんだ。自分がなりたいと思うもの。仕事や恋愛や家庭とか…。それが見つかれば自ずと自分のやりたいことが見つかってくる」
草太に言われたその言葉は今まで考えたこともなかった
それなりの職について、それなりの収入があり、特に不自由がなければそれでいいと
だが、それは一体何なのかと自問自答するが答えは見つからない
「どういう人間になりたいか、か…」
晴人は帰宅途中、河原で夕日が沈むのを見ながら一人考える日々が続いた



