キミが教えてくれたこと




「ふっ…」

「?」

「ははははははははっ!」

急に笑い出す草太に晴人は体を跳ねさせた

「はははっ、晴人ー、やっとだな!」

「?」

「やっと、本音で話してくれたな」

「!」

草太の言葉に耳が熱くなる

「"何が分かるんだよ"かー。それがなー、晴人。俺には痛いほどお前の気持ちが分かるんだよ」


草太は目を細めて微笑み晴人を見る


「俺もお前と一緒。親に捨てられて施設で育った人間だ」


「!」


草太はそう言うと残り一つのバーベナを植え始めた


「親の顔は知らない。どうにも予定外の子だったのか、生まれてすぐ施設の前に捨てられていたらしい」

「………」


晴人は何も言えず眉を寄せる


「俺もなー、天涯孤独で誰も頼れなくて。一人、他の子より大人にならないとって思ってたくさん我慢した。我慢が当たり前になると、周りが馬鹿げて見えて世の中腐ってるって思って生きてた。毎日何にもおもしろくなかったし、人を見ると妬んでばっかだった」


草太は最後の苗を植え終わると手で土を優しく叩いた


「でもな、ある日同じ施設にいた女の子に言われたんだ」


ーーあなたって寂しい人ね

ーー今こうなってしまったあたし達の運命は変えられないの。だけど未来は変えられる。

ーー人が誰しも平等に与えられているのは時間よ

ーーその限られた時間の中でどういう選択をするかで未来は明るくも暗くもなるの

ーーどうせ考えるなら明るい方がいいじゃない!人を妬む時間があるなら、人に羨ましがられる自分になる選択をしなさい!

ーー大丈夫!何かあったらあたしが背中を押してあげるわ!


「その言葉にハッとしたよ。自分は可哀想な奴だ、と卑屈になって蔑んでたのは自分自身だ。他の誰でもない。きっとそんな風に考えていなかったら今の自分はもっと前向きだったんじゃないかって」

晴人は拳を強く握った

「その子がまた可愛くてなー。明るくて優しくて、まぁ後に俺の奥さんになるんだが」

「……惚気ですか」

「惚気だ」


草太が笑うと晴人もクスリと笑った


「晴人、お前には俺と同じ想いをしてほしくない。大丈夫だ、今からでも遅くない。お前は一人じゃない」


草太の言葉にハルトは目を潤ませる


「血の繋がりだけが全てじゃない。どこかで誰かがお前を見てる。お前が心を開けばきっと誰かが支えてくれる。今までよく一人で耐えたな…。これからはお前の抱えてたものを、俺にも背負わせてくれないか?」


今まで耐えていた苦しみがこぼれ落ちるかのようにハルトは涙を流した


生きてきて初めて他人に涙を見せた日だった