『ここ、綺麗でしょ?父と、母の御墓参りに来た後はいつもここに来てたの』
そこは霊園から少し離れた高台だった
街並みが一望でき、夕方のこの時間は夕日が綺麗に見える
最近元気のないハルトに少しでも元気になってほしかった
「すげー!絶景だな!」
久しぶりにハルトの満面の笑みを見てホッと胸を撫で下ろす
『この街は父と母が出会った所なんだって。だから母のお墓をここにしたって言ってた。二人もきっと、ここで同じ夕日を見てたんだと思う』
懐かしいような、寂しいような。けれどしっかりと二人ともこの街並みを見ている
「…茉莉花」
『なに?』
ハルトは強い眼差しで茉莉花の瞳を射抜く
茉莉花の心臓は大きくドクンっと波打った
「茉莉花に、話さないといけないことがある」
茉莉花はハルトから目が離せなかった
響く鼓動の音がまるで近くで鳴っているようだ
ハルトはゆっくりと茉莉花に向き直る
「…俺の名前は天野晴人(あまの はると)」
『!ハルト…もしかしてっ…』
「うん。全部思い出した」
茉莉花は嬉しいはずなのに何故か胸騒ぎだけが残る
「俺も、この街で育った。そして、林先生…茉莉花のお父さんは俺の担任だった」
『お父さんがっ…?』
ハルトはゆっくり頷くとそれまでのことを思い出して話し始める
「俺は、事業に失敗してアルコール中毒になった父親とそれに耐えながらも俺を育てた母親と三人で暮らしていた」
『…っ』
父親は荒れ、母親に暴力を振るようになり、母親を守りたくて止めに入った俺も父親からの暴力を受けていた
そんな父を見兼ねてか俺が小3の頃、母親は自分の荷物だけを持って突然姿を消した
信頼して、唯一の救いだった母親が自分だけ逃げて俺を置いて行った
俺は小さいながらに母親を憎んだ、と同時にすごく寂しかった
家はグチャグチャで学校にも通えなくなり、どこかに飲みに行ったっきり帰って来ない父親から満足な食事を与えられることもなく気を失いそうになっているところを、児童相談所の人に発見された
それから身寄りのなかった俺は施設で育つ事になった
施設にいる子供達は俺と同様いろんな境遇でそこにいた
だけど他人と打ち解けることもしないまま、俺は毎日を与えられた小さな部屋で一人過ごしていた



