キミが教えてくれたこと



落とした視線の先に樹の足元が見えた


くしゃっ

頭に温かい感覚が走り、思わず目線を上げる

そこには儚げに笑う樹の姿があった




「俺ら…いつの間にかでかくなったな」


「………」


樹の手がするりと落ちていく



「一人で苦しかっただろ。辛かったよな」


譲二の目から一筋涙が溢れた


「言ってくれてありがとう。俺はずっと譲二の味方だからな」


樹は譲二の気持ちに否定も肯定もしなかった

だが、それは樹なりの優しさでそれだけで譲二は心のわだかまりが消えた気がした

小さくなっていく樹の後ろ姿を見て譲二はひとしきり公園で泣いた


これでいい、これでいいんだ…そう言い聞かせた







ーーカサッ…








次の日、朝に雑誌のインタビューを受けてから学校へと向かった

時刻はちょうど昼休みの時間だった

譲二はいつも通り教室に向かい、無言で扉を開くとザワザワと騒がしかった教室が静まり返った


不思議に思ったが気にもとめず自分の席に向かう


「しかしビックリだよなー!」

教室の沈黙を破ったのはクラスでも目立つ男子だ


「まさか、あのスーパー高校生モデルが、"ゲイだった"なんて」


心臓が波打ち、思わず譲二は彼の方を見る

するとクラス全員が自分に視線を向けていることに気付いた

机の上に置いた手が震える


「…なぁ、昨日公園でナニしてたの?」


彼は奇妙に笑いながらスマートフォンをかざし、画像を拡大した


そこには昨日の自分と樹が写っていた


喉に冷たい空気が入り込む


周りのみんなはコソコソと耳打ちをしていた


居たたまれなくなり、鞄を持って教室を出ようとするとまた彼がみんなに聞こえるように大きな声を出す


「これ、スクープだよなー。雑誌社に写真提供とかしたら大金が入ってくるかも!そしたら、お前、仕事なくなるな」

ニヤリとした彼に背筋が凍る


「相手の事とか調べたらもっといいかも…」
「やめろよ!!!」


彼の肩に手を置き、普段大声を出さない譲二が彼の言葉に被せるように言うとさらにみんなの視線が注がれる

樹に、樹にだけは迷惑をかけたくなかった





「…おい、触るなよ気持ち悪ぃ…。ゲイのくせに」


その言葉にカッとなって譲二は思わず彼を殴ってしまった

教室に悲鳴が響く


「何も知らないくせにっ!」

自分がどんな思いで今までを過ごして、どんな思いであの日気持ちを告げたのかなんて目の前の彼に分かるはずなんてないのに


「おい!お前ら何してる!!」


そこに事態を聞いて駆けつけた先生に止められ譲二は力なく押さえ込まれるだけだった