キミが教えてくれたこと


それから譲二は樹を避けるようになった

気持ちを知られたくもなかったし、これ以上どうにもならない気持ちを早く忘れたかったからだ


「…おい」


いつもの様に毎日を淡々と過ごし、早足で帰宅しようと下駄箱にいると樹に声をかけられた


心臓が脈打ち、脳にまで響く


「おい、聞こえてんだろ」


樹の言葉に反応せず、下駄箱を開こうとすると肩を掴まれた


「…急いでるんだ」


掴まれた肩が熱い



「いい加減にしろ、言いたいことがあるならハッキリ言えよ」


ーー言えるわけないだろ…


譲二は鋭い目つきで樹を睨んだ


「…もう、僕に関わらないで」


掴まれた肩を振り、無理やり手を退けると急いで下駄箱を開けて靴に履き替えた


「おい!!!」


体育会系の樹にすぐ追いつかれてしまい腕を掴まれる


ーーああ、いつも樹は僕をそうやって捕まえるんだ



「なぁ、言えよ。俺ら親友だろ?意味わかんないままお前とこんな状態になんのは嫌だ」


ーー親友…



「…じゃない」

「あ?」

譲二は勢いよく樹の方に振り向く



「親友じゃない!!一度もそんな風に思ったことない!!」


「…そうかよ。」


珍しく大声を出した譲二に驚き目を伏せて返した


「…今まで…無理に付き合わせて悪かったな」


樹は力なく笑うと掴んでいた腕を話し校舎に戻っていった


「…本当なんだ…」


親友なんかじゃない、ずっと小さい頃から譲二の全ては樹だった


届かない声を小さくなっていく樹の後ろ姿に投げかけ、譲二は学校の門を出た



その日から譲二と樹は話すことなく卒業式を迎えた


みんな卒業証書を受け取り卒業生達は正門近くで写真を撮ったり、仲間と涙を流したりしている


「さ、桜庭君!」


振り返ると同じ学年の女の子がいた


「あ、あの、私、ずっと桜庭君のことが好きで、そのっ…」


彼女は顔を真っ赤にさせて卒業証書の入った賞状筒を握りしめている


「私とっ!つ、付き合ってもらえませんか!?」

「え…」


肩を震わせ下を向いた彼女に戸惑ってしまった


「…ごめん。僕、今は誰とも付き合う気ないんだ」


ごめん、ともう一度謝罪の言葉を口にすると彼女は吹っ切れたように顔をあげた


「うん、わかってた。私が私の気持ちにケジメをつけたかっただけなの」

困ったように笑い、風になびく髪を耳にかけた


「君は…強いね」


譲二は彼女と自分を照らし合わせて言った


「…だって、後悔したくないじゃない」


当たり前にサラリと言う彼女に譲二は何も返せなかった



門を出ようと足を進め、もう一度譲二は後ろを振り返った


遠くの方で樹が涙を流すマネージャーの肩を抱いていた

きっと樹は新しい道を歩き出したのだ

譲二は前を向き門を出た



ーーさよなら、樹