「茉莉花はお人好しすぎるんだよ!」
学校が終わり、パスタを迎えに行った後自宅に入るなりハルトが言い放った
「あんなの茉莉花の気を引かせるために付きまとってんだよ!」
『そういうわけじゃないと思うけど…。どちらかと言うと百合のように話せる相手が出来たことが嬉しいだけじゃ…』
確実ではないが、そう感じた
男女の関係や恋愛感情というより、心を開ける相手として見てくれているように思う
発言こそ女の子が喜びそうなことを言うが、どれも茉莉花にとって本気で言われているようには感じないのだ
「ちょっと男にチヤホヤされるとこれだもんなー、あーやだやだ。俺もイケメンに生まれたかったよ!」
ハルトは宙を漂い拗ねて部屋の奥へと行ってしまった
『先生も言ってたでしょ?転校してきたのには事情があるって。きっと彼も何か抱えてるのよ』
「…知ったこっちゃねぇよ」
ハルトは振り返らず宙で胡座をかいたままだ
『私には、ハルトがいたけど彼には支えてくれる人がいないのかも。ハルトにしてもらったように、私も誰かを支えてあげたいの』
「………」
分かっていた、これはただの嫉妬で茉莉花は言い寄られてるから彼に優しくしてるわけではないと
「それでも…」
ハルトはゆっくりと振り返る
茉莉花は驚いた
ハルトは今まで見たことない程、弱々しい表情をしていたから
「もし、仮に…お前に何かあった時、俺はただ見てるだけで何も出来ない。この手で、お前を守ってやることも出来ないんだ」
視線を自分の両手に向けたハルトは広げた手をぎゅっと握りしめた
あの日、あの体育祭の時に思い知った
ゴール前でゆっくり地面に向かって倒れていく茉莉花を支えようと出した手は、そのまま茉莉花を受け止めることもなく空を切っていた
この体は役立たずで、意味のないものだ
すっ、と自身の手に誰かの手が重なるのが見えた
それは言わずもがな茉莉花の手で、優しく包み込むように握る素振りをみせる
『触れられなくても、ちゃんと伝わってるよ。ちゃんと心で感じるから、だから大丈夫』
支えてあげたいと思っていたはずが、いつの間にかハルトも茉莉花に支えられていたことに気付く
自分が何者かかも分からず、長い夜を過ごしどうすればいいか分からなかった自分の目の前に現れた彼女は、温かく居場所を作ってくれた
「…、あんま他の男とイチャイチャすんじゃねぇぞ」
『…馬鹿ね』
茉莉花は眉を下げて困ったように笑った



