キミが教えてくれたこと



その後からというもの、譲二は休み時間になれば茉莉花の側に行きたわいも無い話をし時にはくっつくなど、スキンシップも激しくなった


「ちょっと桜庭君!」

例によって茉莉花の席に自分の椅子を持って行き、茉莉花に話しかけていると百合が腰に手をあてて譲二に声をかけた


「あなた、ちょっと度が過ぎるんじゃない?」

「そうだそうだ!ゆりりんもっと言ってやれ!!」

ハルトは百合を煽るがもちろん百合には何も聞こえていない

「そうやってベタベタベタベタ彼氏でもないのに…」


「そうだ!離れろ!!!」


「私だって茉莉花ちゃんと一緒にいたいのにずるいじゃない!!」

百合のその叫びを聞いてハルトも茉莉花も項垂れた


「だったら茉莉花の彼氏になるよ。いいでしょ?」

『いや、良くないから』

「てめぇ、調子乗ってんじゃねぇよ!!」

ハルトの怒りもヒートアップしている

このままじゃ埒があかないと思い、茉莉花は椅子を引いてその場を離れようとする

「茉莉花ちゃん、どこ行くの!?」

「茉莉花!」

譲二の横を通り過ぎようとした時、腕を掴まれた


「…僕から離れないでよ」

まるで子犬に見つめられているかのように愛らしく潤んだ瞳を見て顔を赤くしたが、なんとか理性を取り戻し腕を払うと走って教室を出た

「茉莉花ー!どこに行ったのー?」

「茉莉花ちゃーん!私達の方が仲良しだよねー!?」

百合と譲二が追いかけて来て茉莉花を呼ぶが、茉莉花は中庭の木の陰に隠れて二人が立ち去るのを待っていた

二人がああだこうだと言い合いをして中庭から居なくなったのを確認して茉莉花は大きくため息を吐いた


『一体何だって言うのよ…』

何か意図があるのか、それとも彼のとんでもないスイッチを押してしまったのかえらく懐かれてしまったみたいだ



「…おい」

『え?』

いつもより低い声で名前を呼ばれ振り向くと、ハルトは手の甲で茉莉花の口元をゴシゴシと拭く仕草をみせている

だが、案の定茉莉花には触れることなどできず、クソッ!と苛立っている様子だった


『…何をしてるの?』

「拭いてんだよ!アイツ…!茉莉花にっ…その…き、キスなんてしやがって!!」

余程ハルトにとって恥ずかしい単語だったのか、顔を赤くして怒っていた


『…口にはされてないわよ。頰っぺたに少し…』

「え?」

ハルトは素っ頓狂な顔をして茉莉花を見るが、でも!と次は頬を拭く素振りを見せた


「茉莉花も茉莉花だろ!黙ってされてんじゃねぇよ!」

『そんなこと言われたって仕方ないじゃない!いきなりだったんだもん!避けれるわけないでしょ!』

「でもされた時だって振り払わずされるがままだったじゃねぇかよ!」

『驚いて何も出来なかったのよ!』

「いいや、どうだかなー?モデルとかやってるやつだし?所詮イケメンだし?されてラッキーとか思ってたんじゃねぇの?」

茉莉花はハルトの言葉にカチンと来て険しい顔になる

ハルトはそんな茉莉花を見てたじろいだが、もう引き返すことが出来なかった

『私が誰と何しようとハルトには関係ないでしょ!』

そう言ってそっぽを向く茉莉花に次はハルトがカチンと来てしまい収拾がつかなくなってしまった


「ああ、そうかよ!じゃあ勝手にしろよ!イケメンモデルとイチャイチャしてろ!どうせ俺には全く関係ないことだしな!」


ハルトはクルッと茉莉花に背を向け空を飛んで行った






「ぬおおおおおおおお!!!」

少し遠くから久しぶりにハルトの雄叫びが聞こえる

「くそっ…忘れてた…」


理由はまだ解明されていないが、そういえば離れてしまうと体に電流が走るシステムだったことを思い出し心底嫌気がさした

『馬鹿じゃないの』

茉莉花はそんなハルトを見て心配の声もかけずに教室に歩いて行ってしまった