「あ、えっと…」
クラス全員が冷や汗を流し、もしや聞かれていたのではとあたふたしていた
ケラケラ笑っていた男子達もバツの悪そうな顔をして視線を泳がしている
そんなクラスメイトに目もくれず、譲二は教室に入り真っ直ぐ自分の席に向かう
と、思いきや譲二は茉莉花の前に立った
『えっ…と…』
間近で見ると今まで出会ったことのない程綺麗な顔で、背も茉莉花よりかなり高く首が少し痛くなる程見上げなければならなかった
茉莉花の席は窓際の一番後ろなので彼が茉莉花の目の前に立つと茉莉花が全く見えなかった
譲二はポケットに両手を突っ込んだまま茉莉花を見ている
「名前は?」
『え?』
「君の名前」
『林…茉莉花…』
突然の問いに戸惑いつつ、自分の名前を伝えると譲二は「茉莉花…」と呟いてふっと笑った
ーーあ、笑った
そう思った瞬間、前が暗くなりクラスメイトの叫び声が聞こえた
「なっ…!!!!」
ハルトも顔を真っ青にして言葉を詰まらせた
それもそのはず、譲二は茉莉花の名前を呟いた後、左手をポケットから出し茉莉花の後頭部を寄せ後ろ髪をくしゃりとするとそのまま顔を近づけ茉莉花にキスをしたのだ
『……え?』
茉莉花は顔を真っ赤にして固まってしまった
周りは女子の悲鳴や男子の雄叫びが教室を掻き鳴らしている
目の前にはニコニコしている譲二
何がなんだかわからなかった
「おい!てめー!茉莉花に何してんだ!!!」
ハルトの背中が見えて茉莉花は我に返る
ちょっと…っとハルトを止めようとしたがチャイムが鳴り、次の担当教科の先生が入って来てしまった
「はーい、授業はじめっぞー。ん?どうした?」
クラスの異変を感じた先生はやけに群がっている茉莉花の周りを見て聞いたが、誰も何も言わず自分の席に向かった
「茉莉花、あとでね」
そう言うと茉莉花の後ろ髪に触れていた手を頬まで滑らし、少し撫でてから自分の席についた
譲二のその行動に茉莉花は顔を赤くしたまま椅子に座り、授業を受ける
ハルトは終始苛立った様子で譲二を睨みつけた



