「さっき言ったの聞こえなかった?僕に関わらないで」
『私は一人でいる寂しさを知ってる』
立ち去ろうとした背中に茉莉花は気にせず言葉をかける
『傷つかないように周りと距離を置いてた』
彼は足を止めた
『そうやって自分を守ってたし、それが正しいと思ってた。』
ただ平穏に、その日を淡々と過ごして同じ毎日を繰り返していた日々があった
『あなたの周りにこの場所じゃなくても、あなたを支えてくれる人がいるならみんなと無理に仲良くなれとは言わない。自分の居場所はどこにだって作れるものだから』
以前は学校じゃなくてもgrazieの店長さん、奥さん、茜さんやパスタがいた
それでも心を開くことは出来なかったけど、ハルトが現れて自分が自分でいられるようになった
『でも、あなたが思っているよりも世界は優しいことを知ってほしい』
彼は何も言わずそのままその場を後にした
「茉莉花の想い、届くといいな」
『…うん』
茉莉花にハルトがいた様に、彼にも支えてもらえる誰かがいることを願った
「なんかさー、あのジョージとかいう転校生マジで喋りかけても無視なんだけど」
ある日の休憩時間、教室ではクラスの男子が購買で販売しているコーヒー牛乳を飲みながら話ているのが聞こえた
みんな彼に関わるな、と言われてから彼の話題を避けていたので自然とクラスメイトの声に振り向く
「モデルとかやってるし、俺ら一般ピーポーとは関わりたくねぇんじゃね?」
先程の言葉を聞いて他の男子が答える
「いいじゃない、王子様ってかんじで」
「なーにが王子様だよ、馬鹿馬鹿しい。」
「あんた達、ジョージ君がカッコいいからってひがんでんじゃないわよ」
いつの間にか男子vs女子の戦いが始まってしまった
「カッコいいのは認めるけど…もう少し心を開いてくれてもいいのに。せめて普通の会話が出来るくらいに…」
彼が写っている雑誌を見ながらクラスの女子がため息を吐いた
「でもあいつ、ゲイだって噂じゃん」
「うわー!っぽいわ!こえー!」
「ありえそー。狙われるかもー!」
ケラケラと笑って話す男子に茉莉花はカチンと来て机を両手で叩いて立ち上がった
その音がかなり大きく教室全体が静まりかえってしまった
『そういう事を笑い話にするのは良くないと思う。仮にそうだったとしても、誰かが誰かを好きになるのに区別する必要はないでしょ?』
「ま、茉莉花ちゃん?」
「茉莉花、落ち着けよ、な?」
珍しく、それも大人数の前で苛立ちながら自分の意見を言う茉莉花に百合もハルトも落ち着かせようとしていた
性別とは程遠い、そもそも人間では無いハルトに惹かれてることさえも否定されているようだった
どうしたって結末はわかっている
それでも好きな気持ちには嘘をつきたくないから。
茉莉花に言葉を投げかけられた男子達はしどろもどろしている
そこにガラッとドアの開く音が聞こえ、みんなが振り返ると譲二が立っていた



