その時教室のドアが開き、それと同時に廊下からキャーという女生徒の歓喜が聞こえた

なんだなんだ?とクラス中が騒ぎ出すが、担任が少し早いが席につけーと着席するように促した


「朝のHRの時間には少し早いがみんなに話したいことがある。…入って」

担任がドアの方を向くと長身の外国人が入って来た

堀が深く、白い肌に綺麗なグリーンの目が映える。髪は肩あたりまであり毛先は軽くパーマが当たっており、長袖のワイシャツは七分丈あたりまで折り込み制服のポケットに両手を突っ込んでいる

綺麗な人だなーと頬杖をついて見ているとキャーという歓声が教室に響いた


「うそーー!ジョージだー!!!」

「えーーー!あの!?うそ!本物!?」

「やだーー!死んじゃうーー!!」

女の子達は彼を見るなり立ち上がり飛び跳ねた

男子もヒソヒソと耳打ちをし、すげー!なんて言っている


茉莉花もハルトも誰か分からずはてなマークを頭の上に浮かべ首を傾げている


「まぁみんな知っての通り、彼はモデルの桜庭譲二(さくらば じょうじ)君だ。事情があって今日からうちの生徒になる。卒業まで残り少ない時間だが、みんな仲良くするように」


「「はーーーい♡」」

女子は声を揃えて返事をする

「いつもそうやって聞き分けがよければな…。桜庭君、君の席は林の右隣で。林、手を上げてくれ」

『あ、はい』

担任に言われて右手を上げる


彼は生徒達の視線をもろともせず、無表情で席まで向かい椅子を引いて座った

身長が高い分、机や椅子が小さく見える

茉莉花はちらりと盗み見たが、ダルそうに持って来た本を読んでいる彼を見て特に気にすることなく授業を受けることに専念した


どうやら彼は日本人の父とデンマーク人の母から産まれたハーフらしい

15歳、即ち高校入学と同時に街でスカウトされ今やメンズ雑誌はもちろん女性雑誌にもモデルの彼氏役として登場したり、10代、20代向けのアパレルブランドでは広告塔になってモデルをしているものもあるそうだ

雑誌をあまり読まない茉莉花には関心が薄く、教室の端で山内さんに貸してもらった彼の映っているティーン向けの女性雑誌をペラペラとめくっていた

「確かに…とっても綺麗な顔してるよね…。」

目を輝かせて顔を赤らめ、ため息を吐く百合に珍しい、と思った


『百合は彼みたいな人がタイプなの?』

「すごくタイプ!!」

その言葉に目を丸くした

今までその手のことには皆無で、口を開けばアニメの話しや声優の話をしていたからだ

だって…、と続けて話す百合に耳を傾ける



「彼、きっと魔法美少女戦士に従える騎士の服が似合うんだもの。剣が武器でね、その手捌きが圧巻で敵を倒した後にする仕草なんて…」

『わかった、あなたはコスプレ対象として見ているということね』


百合の暴走を制止し、頭を抱えた