私は一歩も動けずにいた。ソファーから立ち上がりかけたまま。
榊の足音が近づいてくる。見られたくない、今の私の顔を。サッと顔を伏せたまま榊の横を通り過ぎようと思ったのに腕が伸びてきて、榊に捕まった。
「アリス」
「今日は帰るよ」
ダメだ声も変わってしまった。震えてる。
「おい、アリス泣いてるのか?」
そう泣いてるよ! 榊の腕の中で背を向ける。
「うるさい。帰るから離して」
「アリス……あのヤスの言ってたのは、その別れた彼女だから。前の前の学校の高一の時に少しの間付き合っただけで。ってお前も桐山って彼氏いただろ?」
「違う。いい。そういうんじゃない」
そう違う。彼女じゃない自分と彼女だったカオリという子。そして慣れた手つきでキスをした榊。いろんな事に思いを巡らしていた苦しい日々にとどめが来たんだ。
「榊にとって私がなんでもないのはわかったから」
「どう解釈したんだよ」
「え?」
「あーもー。わからない!」
それはこっちのセリフだよ。
「榊が好き」
「え? 隆じゃないのか?」
それはどこから来た発想?
「違う。なんで柏木?」
「いや、アリスの態度が」
「態度って」
あ、確かに少し、いや橘に対しての態度とは大きく違ってるかもしれないけど。
「それはなんとなく」
「そう。なんとなくね」
「そう」
あれ? 私は言い切ったけど返事ないよね?
「榊、あの返事がないんだけど」
このまま、うやむやになんてされたくない。
「ああ」
榊は腕の中にいる私をクルッと回して榊と向き合わせる。
涙が伝っていた顔なのに酷いよ。
「アリスが好きだ。ずっと。はじめから」
「え? はじめから」
「当たり前だろ家に連れてきたり、キスするわけないだろ。好きでなきゃ」
初対面で好きになっても家に連れてきたり、キスしないと思うけど。
「わからないよ! そんなの。そういう奴もいるでしょ!」
あ、でも、榊はそういう奴じゃない。そう考えてみれば。
「お前こそついてくるし、無抵抗だし」
自分がしといていいますか? まあ、実際そうだったんだけど。
「だって、好きになってたんだもん」
「え? あの時?」
「そうずっと一時間もあそこにいたのは榊を見てたから。そして、声をかけた」
そうもうすぐ一年経つ。あそこで一時間ずっといた理由を自分自身に言い訳していた。榊を好きになったなんて思えずに。
「一時間も見てたの? あの時?」
そう時間ギリギリまで見てた。どうしようかわからないまま。
「そう! だからついて行ったの!」
「でも、帰った」
「だって、どうしていいか……でも、このマンションに、榊の隣に越して来なくても、私きっと会いに来てた。同じ学校にならなくても」
そう、榊が私に声をかけてくれなくても。
「アリスわかりにくい」
「榊こそわかりにくい!」
「俺は何度もアリスに言ったけど、付き合ってるとか可愛いとか」
最後は榊かなり照れてるし。
「家に誘ったし、朝も一緒に居たかったから。でも、アリス嫌々って感じだったろ?」
それは……。
「榊の気持ちわからなくて辛かったから。一緒にいたいけど榊が誘うのいつも暇だとか言い訳つくんだもん」
「それは、ごめん。恥ずかしいから言い訳してた。本当は一緒にいたかったから。他の奴に取られたくなかった」
「じゃあなんでメガネと三つ編みとったの?」
そう! あのままなら誰も寄ってこないのに。
「可愛いアリスが見たかったから……」
顔から火が出るってこういうこと? って榊も顔赤いし。
ああ、もう! 一年も苦しんでこういう事って!
「榊とこうしてたかったから、言えなかったのに! もっと早く言えば良かった」
これ以上恥ずかしいのとずっと距離を取られていたんで近くにいたかった思いが合わさって榊に抱きついた。
「あ、アリス!?」
「榊……陸のバカ! 手が早いの遅いのどっちよ!」
「あれは精一杯の演技、今のが本当」
手慣れたキスも抱擁もすべて演技って、もう!
「困るどうしたらいいか」
「ごめん。アリス」
そして、陸は私に優しいキスをする。
唇を離して陸の顔が目の前に。
「アリス。好きだ。付き合って」
「うん。順番かなり逆だけど許す」
*
隣のメガネ君はメガネをやめて、元の榊陸になった。最近は陸は私の家にいることが多い。叔母の電話に間に合わないと困るから。今までの一年を埋めるように私たちは一緒にいる。
*
三年生になった榊は面白い生徒会長じゃあなくなったけど、夜の街には出なくなり、実家にも時々顔を出すようになった。橘と柏木とは相変わらずの仲がいい。生徒会本当に関係ないのね。柏木はすっかりモテ男になって日々女子に追い回されてる。橘が笑ってるのは気のせいじゃないね。
ちなみに今年の生徒会長の立候補が三名も出て選挙が行われた。早速、私達が愛用した投票箱は活用されてる。朝の仕事がなくなったから立候補が一気に増えたようだね。さて、面白い生徒会長はあらわれるのか?
生徒会長なったのが去年の一年生だったからなのか? 去年の教訓を活かしてさらなる面白い生徒会を作る気のようだ。廊下にはあの箱も置いてある。『ご要望を!』ってやっぱりネタないんだね。ご意見は消して正解だよ。資源の無駄だった生徒会室のゴミ箱が思い浮かぶ。
卒業間近になり私は陸とここから通える大学に入学することが決まった。陸が家から逃げていたのは新しいお父さんが医者で華音さんも医学部で、弟の翼君が進学校に通って医学部を目指していたからだった。そんな三人とは関係なく、私と大学に行くこと決めた陸は実家に寄り付けるようになったみたい。いろんな事を吹っ切れたんだろう。また私に関係なく一人で決めてたんだけど。
***
卒業間近の卒業生を送るという行事をなんと今年の生徒会長は塗り替えた。音楽ではなく演劇に。そこには私達の姿が。昨年の生徒会をモチーフに演劇が繰り広げるられた。コスプレを最後まで見ることになろうとは。コスプレ一色なこの二年だったな。榊陸の残したものは? 面白い生徒会だね。
大学生になっても陸は面白い事を見つけるかな? 私と。
榊の足音が近づいてくる。見られたくない、今の私の顔を。サッと顔を伏せたまま榊の横を通り過ぎようと思ったのに腕が伸びてきて、榊に捕まった。
「アリス」
「今日は帰るよ」
ダメだ声も変わってしまった。震えてる。
「おい、アリス泣いてるのか?」
そう泣いてるよ! 榊の腕の中で背を向ける。
「うるさい。帰るから離して」
「アリス……あのヤスの言ってたのは、その別れた彼女だから。前の前の学校の高一の時に少しの間付き合っただけで。ってお前も桐山って彼氏いただろ?」
「違う。いい。そういうんじゃない」
そう違う。彼女じゃない自分と彼女だったカオリという子。そして慣れた手つきでキスをした榊。いろんな事に思いを巡らしていた苦しい日々にとどめが来たんだ。
「榊にとって私がなんでもないのはわかったから」
「どう解釈したんだよ」
「え?」
「あーもー。わからない!」
それはこっちのセリフだよ。
「榊が好き」
「え? 隆じゃないのか?」
それはどこから来た発想?
「違う。なんで柏木?」
「いや、アリスの態度が」
「態度って」
あ、確かに少し、いや橘に対しての態度とは大きく違ってるかもしれないけど。
「それはなんとなく」
「そう。なんとなくね」
「そう」
あれ? 私は言い切ったけど返事ないよね?
「榊、あの返事がないんだけど」
このまま、うやむやになんてされたくない。
「ああ」
榊は腕の中にいる私をクルッと回して榊と向き合わせる。
涙が伝っていた顔なのに酷いよ。
「アリスが好きだ。ずっと。はじめから」
「え? はじめから」
「当たり前だろ家に連れてきたり、キスするわけないだろ。好きでなきゃ」
初対面で好きになっても家に連れてきたり、キスしないと思うけど。
「わからないよ! そんなの。そういう奴もいるでしょ!」
あ、でも、榊はそういう奴じゃない。そう考えてみれば。
「お前こそついてくるし、無抵抗だし」
自分がしといていいますか? まあ、実際そうだったんだけど。
「だって、好きになってたんだもん」
「え? あの時?」
「そうずっと一時間もあそこにいたのは榊を見てたから。そして、声をかけた」
そうもうすぐ一年経つ。あそこで一時間ずっといた理由を自分自身に言い訳していた。榊を好きになったなんて思えずに。
「一時間も見てたの? あの時?」
そう時間ギリギリまで見てた。どうしようかわからないまま。
「そう! だからついて行ったの!」
「でも、帰った」
「だって、どうしていいか……でも、このマンションに、榊の隣に越して来なくても、私きっと会いに来てた。同じ学校にならなくても」
そう、榊が私に声をかけてくれなくても。
「アリスわかりにくい」
「榊こそわかりにくい!」
「俺は何度もアリスに言ったけど、付き合ってるとか可愛いとか」
最後は榊かなり照れてるし。
「家に誘ったし、朝も一緒に居たかったから。でも、アリス嫌々って感じだったろ?」
それは……。
「榊の気持ちわからなくて辛かったから。一緒にいたいけど榊が誘うのいつも暇だとか言い訳つくんだもん」
「それは、ごめん。恥ずかしいから言い訳してた。本当は一緒にいたかったから。他の奴に取られたくなかった」
「じゃあなんでメガネと三つ編みとったの?」
そう! あのままなら誰も寄ってこないのに。
「可愛いアリスが見たかったから……」
顔から火が出るってこういうこと? って榊も顔赤いし。
ああ、もう! 一年も苦しんでこういう事って!
「榊とこうしてたかったから、言えなかったのに! もっと早く言えば良かった」
これ以上恥ずかしいのとずっと距離を取られていたんで近くにいたかった思いが合わさって榊に抱きついた。
「あ、アリス!?」
「榊……陸のバカ! 手が早いの遅いのどっちよ!」
「あれは精一杯の演技、今のが本当」
手慣れたキスも抱擁もすべて演技って、もう!
「困るどうしたらいいか」
「ごめん。アリス」
そして、陸は私に優しいキスをする。
唇を離して陸の顔が目の前に。
「アリス。好きだ。付き合って」
「うん。順番かなり逆だけど許す」
*
隣のメガネ君はメガネをやめて、元の榊陸になった。最近は陸は私の家にいることが多い。叔母の電話に間に合わないと困るから。今までの一年を埋めるように私たちは一緒にいる。
*
三年生になった榊は面白い生徒会長じゃあなくなったけど、夜の街には出なくなり、実家にも時々顔を出すようになった。橘と柏木とは相変わらずの仲がいい。生徒会本当に関係ないのね。柏木はすっかりモテ男になって日々女子に追い回されてる。橘が笑ってるのは気のせいじゃないね。
ちなみに今年の生徒会長の立候補が三名も出て選挙が行われた。早速、私達が愛用した投票箱は活用されてる。朝の仕事がなくなったから立候補が一気に増えたようだね。さて、面白い生徒会長はあらわれるのか?
生徒会長なったのが去年の一年生だったからなのか? 去年の教訓を活かしてさらなる面白い生徒会を作る気のようだ。廊下にはあの箱も置いてある。『ご要望を!』ってやっぱりネタないんだね。ご意見は消して正解だよ。資源の無駄だった生徒会室のゴミ箱が思い浮かぶ。
卒業間近になり私は陸とここから通える大学に入学することが決まった。陸が家から逃げていたのは新しいお父さんが医者で華音さんも医学部で、弟の翼君が進学校に通って医学部を目指していたからだった。そんな三人とは関係なく、私と大学に行くこと決めた陸は実家に寄り付けるようになったみたい。いろんな事を吹っ切れたんだろう。また私に関係なく一人で決めてたんだけど。
***
卒業間近の卒業生を送るという行事をなんと今年の生徒会長は塗り替えた。音楽ではなく演劇に。そこには私達の姿が。昨年の生徒会をモチーフに演劇が繰り広げるられた。コスプレを最後まで見ることになろうとは。コスプレ一色なこの二年だったな。榊陸の残したものは? 面白い生徒会だね。
大学生になっても陸は面白い事を見つけるかな? 私と。

